鉄を摂っても貧血のような症状が変わらない理由を鍼灸師が解説

鉄を摂っても貧血のような症状が変わらない理由を鍼灸師が解説
「貧血にいいと聞いて、鉄の多い食品を食べている」「鉄のサプリを飲んでいるのに、朝から体がだるい」。そんな声を、よく耳にします。
この記事では、鉄の働きと、鉄を摂っても症状が変わらない5つの理由、そして医療機関で確認したい目安をお伝えします。
鉄は、体の中で何をしているの?
鉄は、血液が全身に酸素を運ぶために必要なミネラルです。
血液の中の赤血球には、酸素を運ぶ成分(ヘモグロビン)が入っていて、その材料が鉄です。鉄が足りなくなると、酸素を運ぶ力が下がり、疲れやすさ、息切れ、動悸、めまいなどが出ることがあります。
鉄は、食べたものから体を動かすエネルギーを作る流れや、ホルモンを作る働きにも関わっています。
ただし、「鉄が足りない=必ず疲れる」という単純な話ではありません。疲れやすさには、睡眠、食事の量、持病なども関わるため、体全体で考える必要があります。
理由① 食べても、体に吸収できていない
食べた鉄が、すべて血液の材料になるわけではありません。
鉄は、おもに小腸で吸収されて、血液で運ばれ、必要な場所で使われます。食品の鉄には2種類あり、吸収されやすさが違います。
| 肉や魚の鉄 | 野菜・豆・穀物の鉄 | |
|---|---|---|
| 主な食品 | 赤身肉、レバー、魚介類 | 大豆製品、小松菜、ひじき |
| 吸収されやすさ | 比較的よい | 肉や魚より低め |
| コツ | そのまま食べやすい | ビタミンCや、肉・魚と一緒に食べると吸収が高まる |
また、胃酸を抑える薬を長く飲んでいる方や、胃腸の病気がある方は、鉄の吸収が下がることがあります。だから、鉄の多い食品を食べていても、十分に吸収できているとは限りません。
理由② ストレスで、胃腸の働きが変わっている
強いストレスが続くと、胃腸の働きにも影響が出ます。
緊張したときに、食欲がなくなったり、胃が重くなったりした経験はありませんか。脳と胃腸は、神経を通してつながっていて、お互いに影響し合っています。
ただし、「ストレスだけで鉄不足になる」と決まっているわけではありません。鉄不足が続くときは、ストレスだけを原因にせず、食事の内容、出血、飲んでいる薬、胃腸の病気なども確認することが大切です。
理由③ 摂る量より、失う量が多い
女性の場合、まず確認したいのが月経の出血量です。
月経では、血液と一緒に鉄も失われます。出血量が多いと、食事で鉄を摂っていても、追いつかないことがあります。次のような変化はありませんか。
- 以前より、月経の出血量が増えた
- ナプキンを頻繁に替える必要がある
- 大きな血のかたまりが出る
- 月経が長く続く
- 月経のたびに、強い疲れを感じる
子宮筋腫などの婦人科の病気が背景にあることもあります。また、胃腸からの出血が原因で鉄が不足する場合もあります。
更年期の前後は、月経の回数が減るため「貧血になりにくい」と考える方が多いのですが、そうとは限りません。体型を気にして食事を減らしていると、鉄やたんぱく質が足りなくなり、貧血のリスクが高まりやすくなります。
閉経後の出血や、原因がわからない鉄不足は、必ず医療機関で確認してください。
理由④ 鉄以外の栄養も足りていない
赤血球を作るには、鉄だけでなく、ほかの栄養も必要です。
たとえば、ビタミンB12と葉酸は、正常な赤血球を作るために欠かせません。これらが足りないと、鉄不足とは違うタイプの貧血が起こることがあります。また、たんぱく質は、酸素を運ぶ成分の材料になります。
この流れのどこかが止まっていれば、鉄だけを増やしても、症状は変わりません。食事の量が少ない方や、偏りがある方は、鉄だけでなく、食事全体を見ることが大切です。
理由⑤ そもそも、鉄不足ではない
「貧血っぽい」と感じる症状は、鉄不足だけで起こるわけではありません。
疲れやすさ、立ちくらみ、動悸、息切れ、めまいは、次のような場合にも起こります。
- 水分が足りていない(脱水)
- 立ち上がったときに血圧が下がる
- 脈の乱れ(不整脈)
- 甲状腺の病気
- 睡眠不足
- 食事を抜いたときの、血糖値の低下
食事を抜いたあとに、冷や汗、手の震え、動悸、強い空腹感が出る場合は、血糖値の低下が関わっていることもあります。ただし、貧血と低血糖は別の状態です。症状が似ていても、同じ原因とは限りません。
息切れや動悸が続く、月経の出血量が多い、便が黒い、原因のわからない体重減少がある場合は、早めに受診してください。胸の痛み、失神、強い息苦しさ、急に悪化する症状があるときは、すぐに受診が必要です。
鉄が足りているかは、血液検査で確認できる
鉄不足かどうかは、症状だけでは判断できません。血液検査で確認します。
| 検査の項目 | わかること |
|---|---|
| ヘモグロビン | 貧血があるか、どのくらいかの目安 |
| フェリチン | 肝臓にためている鉄の量の目安 |
| 血清鉄 | 血液の中を流れている鉄の量 |
ヘモグロビンが正常でも、フェリチンが低く、ためている鉄が少ない場合があります。反対に、フェリチンは体内で炎症があると高くなることもあるため、1つの数値だけでは判断できません。
どの検査が必要かは、症状や状況によって変わります。まずは医療機関で相談してください。
鉄を上手に摂るための食事のコツ
① 肉・魚・大豆製品を組み合わせる
赤身肉、魚介類、大豆製品、小松菜など、いろいろな食品から摂りましょう。1つの食品に偏らないことが大切です。
② ビタミンCを含む食品と一緒に食べる
野菜や豆から摂る鉄は、ビタミンCと一緒だと吸収が高まります。ブロッコリー、パプリカ、柑橘類などを添えてみましょう。
③ 食事の量を、極端に減らさない
食事が少なすぎると、鉄だけでなく、たんぱく質やビタミンも足りなくなります。幅広く食べることが基本です。
④ サプリだけに頼らない
出血や吸収の問題が原因のときは、サプリだけでは追いつかず、治療が必要なことがあります。
鉄は、摂りすぎると体に負担がかかります。お腹の不調(吐き気、便秘、下痢など)が出ることもあります。医師から鉄剤を処方されている方は、自己判断で増やしたり、やめたりせず、検査の結果を確認しながら使ってください。
こんな方は、原因の確認から始めましょう
鉄を増やす前に、「なぜ疲れやすいのか」を確認してみましょう。
先に確認したい方
- 鉄を摂っているのに、疲れやすさが変わらない方
- 月経の出血量が多い、または以前より増えた方
- 立ちくらみやふらつきが、よく起こる方
- 食事の量が少ない、偏りがある方
早めに医療機関へ相談したい方
- 息切れや動悸が続く方
- 便が黒い、原因不明の体重減少がある方
- 閉経後に出血がある方
- 持病や服薬があり、サプリを使いたい方
よくある質問
鉄のサプリは、飲んだほうがいいですか?
まず、血液検査で鉄が足りているかを確認してください。 自己判断で飲み続けると、原因を見逃したり、摂りすぎたりすることがあります。持病や服薬がある方は、主治医にご相談ください。
鉄は、食事だけで足りますか?
食事の内容や、月経の出血量によって変わります。 肉・魚・大豆製品をバランスよく食べ、ビタミンCも組み合わせましょう。それでも症状が続くときは、検査で確認してください。
貧血っぽいとき、鍼灸院に相談してもいいですか?
迷わずご相談ください。 必要であれば、病院での検査をおすすめします。検査で原因を確認したうえで、疲れやすさや体の使い方、生活習慣のご相談は、LaLa鍼灸サロンでお受けします。
まとめ
- 鉄は、血液が酸素を運ぶために必要な栄養です
- 「摂ること」と「体の中で使えること」は別です
- 吸収、出血、ほかの栄養、ほかの原因を順に確認しましょう
- 症状が続くときは、鉄を増やす前に血液検査で確認しましょう
「鉄を摂っているのに変わらない」と感じたら、摂る量を増やす前に、体の中で何が起きているのかを確認することが大切です。

